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ギター弦の正しい巻き方
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ギター弦の正しい巻き方

チューニングが狂うという内容の修理依頼で、よくある原因の一つが弦に関係するものです。

弦の品質もありますが、それ以前に巻き方によるものが少なくありません。

弦の質が悪い場合はオクターブチューニングに影響が出たり、ピッキング直後と減衰時の音程が違うなど、狂うというよりそもそも合わせにくい。

一方、巻き方が悪い場合は、いったんは合ったものの演奏中に狂ってくる(チョーキングやアーミング時、強いストロークなどなど)パターンが多いです。

これはナットの溝の具合やストリングガイドなどの影響もありますが、要するに弦の座りが不安定なのです。

弦が己の張力だけで元の位置に戻れるためにはキチンとした弦の巻き方が不可欠です。

正しい弦の巻き方

良くない巻き方 その1

ただ巻き付けただけ。

弦と弦が重なり合ってグチャグチャになってしまっている。

わずかな張力の変化ですぐ狂ってしまいます。

良くない巻き方 その2

一見キチンと巻いているようで、よく見ると巻きがブッシュ(一番下の輪)の所まで来ている。

巻き過ぎのパターン。

弦のたわみが多くなりフラットしやすい。

理想的な巻き方

基本的に弦は上から下に向かって巻いていきましょう。

例外としてナットでのテンション(張りの強さ)を弱めるために逆の巻き方をする方もいますが、それは巻き方にいろいろな制限が出てくるのをちゃんと分かってやってることで、基本は上から下です。

画像は各ペグの適正な巻き数を写してみたものです。

大ざっぱですが、6弦で2〜3回、1弦で4〜5回といったところでしょうか。

高音弦にいくに従ってペグごとに徐々に増やしていきます。

フェンダー系のクルーソンタイプのペグ

フェンダー系のクルーソンタイプのペグは弦の先をペグポスト(巻き付ける所)の先端に開いた穴に差し込んでから巻き始めます。

あらかじめ長さを決めてカットして、L字型に曲げておくと巻き始めがズレにくいです。

その他のペグは巻き始めの余りが一巻き目と二巻き目の間に挟まるようにすると幾分落ち着きが増します。

L字に折り曲げる位置は、各弦ごとに「この辺」ていう目安を覚えておくと良い。

巻く方向を考えて折り曲げよう。

1弦の場合2弦のペグ辺りとかそんな程度でいいのだ。

クルーソンタイプとロトマチックタイプの違い

「クルーソン(Kluson)」は本当はペグメーカーの社名。

フェンダー、ギブソンなどに付いていたのでそのギターのコピーモデルの普及とともに国内外のいろんなメーカーが同型のペグを作っている。

有名なのは、日本製でゴトー社の物。

片側6連のフェンダータイプ用。

両側3連のギブソンタイプ用。

ツマミの形はいろんなのがある。

ヘッドトップ側の穴に取り付けるパーツをブッシュと呼び、普通は打ち込み式。

ペグのスタンダード的存在だ。

ロトマチックはクルーソンタイプをカスタマイズしたような位置付け。

クルーソンのプレスで作られたギアボックスはダイキャスト製に、ブッシュはペグをヘッドの表裏から挟んで固定するためネジ式に、そしてツマミにはギアのガタを押さえるためのネジが付いている。

この他ポストのガタが少ない物など、さまざまな改良モデルがあってビンテージスタイル以外のギターに数多く採用されている。

画像はポストの比較。

アコースティックギターのブリッジ側

アコースティックではブリッジ側にも気を配りたいです。

これはチューニング面よりもブリッジ内部やブリッジピンの変形などを少なくするため。

最悪ピンを破壊しないと弦が替えられなくなることもあるので結構大事。

アコギの場合、ボールエンドはボディートップ裏のブリッジプレートに直接引っかかっているので、ボールエンドの向きによってはピンが変形してプレートの減りが激しくなる。

画像左寄りの銀色のボールエンドが1弦でこの向きが理想。

ピン、プレートともに負担が掛かりにくい。

この写真だと3〜5弦が一番マズイ。

ピンの溝にボールエンドの角が入り込んでいるのでピンが変形しやすく穴も広がりやすくなる。

穴が広がるとボールエンドはどんどんブリッジプレートにめり込んでいって、弦の折り返し部分がサドルの上に乗っかってしまったりするのだ。

いずれ減ってしまうものとはいえ、少しでも永持ちさせたい所なので、弦交換の際に注意しよう。

対策はごく簡単。弦をピン穴に通す際、画像のように巻き部分を少しカーブさせるだけ。

向きに注意。

ボールエンドはこの向きに、さらに弦の折り返し部分の出っ張りはなるべくカーブの外側になるようにしよう。

注:アコギの2弦(017などのゲージ)は急に曲げるとポキッと折れてしまうことがあるので、控えめに!

弦を張った時、ボールエンドが画像の向きになるように穴に通す。

弦の先はナット方向に延びているはず。

このギターのようにピン穴にも溝が掘ってある場合、弦はちゃんと引っかかればピンなしでも外れない。

このギターではブリッジピンは穴をふさいでいるだけなのだ。

6弦などは巻き部分が太くなってるので、この溝があるとピンへの負担が少なくて良い。

巻き残りの処理

最後にこれはこちらからのお願いでもありますが、はみ出している弦はなるべく切りましょう。

この状態(この位の長さ)が最も危険。

薄めのソフトケースの上からうっかりヘッドをつかむとプスッと刺さるのです。

ニッパーが届く目一杯まで切ってもチューニングには全く影響ないのでご安心を。

指先をケガするのはプレイヤーとしては避けたいところ。

またコレがイタイんだ。


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ライタープロフィール

RUNE GUITAR MAINTENANCE 佐藤

ギター修理専門の個人工房

RUNE GUITAR MAINTENANCE 佐藤

埼玉県にあるギターの修理専門の個人工房です。

ウェブサイト:http://www.runeguitar.com

ブログ:http://runeguitar.exblog.jp

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