【初心者のための】クラシックギター購入前に知っておきたいこと
ギターの中でも、もっとも長い歴史があるクラシックギター。
スパニッシュギター、ガットギターとも呼ばれ、活躍の場はクラシックからボサノバやジャズなど多岐です。
今回は、これからクラシックギターをはじめたい方のためにまず知っておきたい選び方を解説したいと思います。
まずは安いギターを買いましょう
今回の記事のテーマである「初心者のためのクラシックギターの選び方」ですが、まずは結論を言います。
クラシックギターにおいては「安いギター」を買いましょう。
具体的な値段としては3万円から5万円程度のものがよいでしょう。
クラシックギターの主な材質として杉材と松材などがありますが、今の段階で木の材質などについて考える必要はありません。
反対に注意点ですが、初心者の方がいきなり高価なギターを買ってはいけません。
また極端に安価なもの(1万円前後のもの)もやめましょう。
はじめに結論を書きましたが、これらの理由について順を追って解説していきます。
初心者であるあなたにギターの違いはわかりません
一般的に良いといわれるクラシックギターは、おおよその値段にして国産のものだとだいたい50万円以上、輸入ギターだと100万円以上します。
そして重要なのは、クラシックギターは他のどの楽器よりもギター1本1本の個性が大きく異なるという点です。
同じ価格帯のものであっても……全く違う楽器といっていいほど性質が異なるのです。
さて、少し失礼な副題ですが、はっきりと書いておきます。
もしあなたがこれから初めてクラシックギターを始めようという段階であれば、あなたにはギターの良し悪しはわかりません。
どれだけ優れたプレーヤーがあなたに解説しようとも、どれほど話の上手な方が説明しようともあなたにギターの良し悪しを理解させることはできません。
例えば、皆さんはこのようなテレビ番組を見たことはありませんか。
ある器楽奏者が2つの異なる楽器を弾き比べどちらが高価なものかを当てるというものを。
一方はとてつもなく高額なものであり、はたまた一方は非常に安価なものなのですが、傾聴してみてどちらがよいのかはっきりとわからないゆえに面白さを感じる番組です。
初心者であるあなたにギターの違いはわからないというのはこのことに似ています。
つまり、比較しうる楽器としてのギターの種類も知識も、演奏能力によって引き出しうる楽器自身の潜在能力についても何もわからない状態なのです。
そしてこれは、誰にとってもごくごく自然なことなのです。
ギターの音の出し方とは
ギターの音について、少し、皆さんがなかなか実感がしづらいようなことを書きます。
例えば、私が高級で非常によいギターを弾くとします。
はたして、良い音が出ると皆さんは思いますか?
答えは、私にはわかりません。
状況によると言うのが正解でしょう。
高級なギターでも、もし弦が新しいものでなければ望む音は引き出せません。
もし私の爪のコンディション(クラシックギターは爪で弾きます)が整っていなければ、望む音は出せません。
もし私の体温が冷えていて間接が固まっていたら望む音など出せません。
今度は、私が万全なコンディションで安価なギターを弾いたとします。
その場合とてもよい音楽が奏でられるでしょう。
しかし、イメージする音が引き出せるかといえば不可能です。
少しわかりづらい話だったと思いますが、ギターの音の出し方とはこのようなものなのです。
演奏者が出したい音をイメージして、その音を引き出すことができるギターが良いギターなのです。
ゆえにギターといってもものによって全く性質は異なるために、良いギターは演奏者によって異なるのです。
つまり、あなたにとって良いギターとは、今のあなたには絶対にわからないのです。
まだ音のイメージができない状態なのですから。
初心者がいきなり高額なギターを買ってはいけない理由
さて、ここまでずいぶん難しそうな話のように思われたと思いますが、今書いたようなギターに関する知識は、数年もすれば誰もが経験とともに身につけられるものです。
では、なぜ回りくどい話をしたかというとここに行き着きます。
初心者がいきなり高額なギターを買ってはいけないということです。
よく聞く話ですし、私も個人のギター教室をしているので生徒さんからも尋ねられることが多いのですが、それは「最初から良いギター(高額なギター)を使わないとうまくならない、音の違いがわからなくなるというのは本当ですか?」というものです。
まずはこの問いに対する答えですが、全くそのようなことはありません。
初心者の方やこれから子供に習わせたいと思っている親御さんなど、ギターに関する知識がまだ何もない状態の人に、不安をあおるように高額なギターをすすめるという話はよくあります。
もちろん楽器屋だけでなくレスナー(講師)にとっても楽器販売にノルマ、マージンが絡むのはほかの商売と同じです。
つまり、あなたが望むのとは別に、売りたい側の考えというのもあります。
また、今はどれだけ高額なギターであってもローンでの購入が簡単にできてしまうのも楽器購入における失敗の原因でしょう。
良いギターというのは非常に高級で高額なものであり、何度も言うように千差万別です。
よって、知識のない段階では絶対に購入してはいけないのです。
ここまでで、初心者がいきなり高額なギターを買ってはいけない理由がわかっていただけたと思います。
ただ、私は高級なギターを否定しているわけでは決してありません。
むしろ、なるべく早い段階で良いギターとめぐりあえるのが演奏者にとってベストだと思っています。
楽器というのは不思議なもので、単なる音を出すためのツールではなく、例えるなら人生の相棒のようなものです。
自分自身の努力や想像力を映し出す鏡のようなものでもあります。
良い楽器と出会い音楽を奏でるのは本当に幸せなことです。
若いミュージシャンが自分のえがく音を求めて、頑張ってバイトして自分が望むギターをローンで購入するということはとても良いことだと思います。
つまりは、最低限のギターに関する知識、経験、能力がない状態で高額なギターを購入するのはやめましょうということです。
極端に安価なギターをすすめない理由
安価なギターをすすめない理由としては、きちんと弦を押さえているのに音が出なかったり、いわゆるギターの音ではないなんだかペラペラした音が出たり、異様に弾きづらかったりと、練習にならないレベルの楽器もあるからです。
みながみなそうであるわけではないですが、あまりに安いものにはやはりそれだけの理由があるということです。
なので、これからギターを始める方にはおすすめできません。
結論として、はじめに述べたように3万円から5万円程度のギターをおすすめすることになるわけです。
この価格帯には各社の量産ギターがあり、材質はもちろんそれほど良いものでなく、高級な手工ギターの持つ個性には欠けますが、造りは頑健で、構造がしっかりしているので弾きやすく、目立った非もなく、上達するにしたがって良い音もしっかり出してくれるので初心者の方には最適なギターでしょう。
最後に
今回は「初心者のためのクラシックギターの選び方」についてお話しました。
これからは主に、クラシックギターの初心者の方やエレキ・フォークの経験者で新たにクラシックギターを始められる方向けに、技術の向上の手助けになるような記事を書いていくつもりです。
と同時に、それは中級者、上級者にとっても基礎能力の見直しや改善、進化につながるものと思います。
ライタープロフィール
ギタリスト
大沢稔
作曲家、ギタリスト、マルチインストゥルメンタリスト。
パリ国立地方音楽院クラシックギター科卒。
フランスのブーローニュ・ビヤンクール国立地方音楽院、オルセー県立音楽院のクラシックギター科教授歴任。
現在、新潟県上越市にて自身の創作、演奏活動を、また、ギター・英語・フランス語教室を主宰している。
大沢ギター・英語・フランス語教室
http://minoruohsawa.wixsite.com/ohsawaguitar